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 ある日、私がライトニングでウオームアップしていると、マットを担いだ少年があらわれ、私の登りを真剣に見てる。最後のマントルの部分では自分のマットを拡げてスポットに付いてくれる。この一連の彼の行動を見ていてボルダラーとしての資質を十分見抜くことが出来た、「ライトニング」の上へ出て「Thanks!」と声をかける。

 彼の名前はダスティン、LakeTAHOに父親とShopとGymを経営するヤツで16才、最高にいいヤツ。
「ライトニング」について2〜3質問される、彼は自分の場合のMoveと比較する(米国人は大抵ロン・コ−クのようにライトニング・ホールドに飛びつく、それで結局指が弱いので登れない)自分の場合は足を上げ、スタティックに取りにいくので登って見せるとほとんどみんな驚くか「信じられん」と言う。

  このダスティンのいいところは”集中の仕方””精神力について””微妙なボディ・コントロール”と今まで外国人には聞かれた事のない質問がポンポン出るところだ。
 なおかつこの見知らぬ東洋人の答えを本当に真剣に聞く。ちなみに彼が一番喜んだのは”恐怖心”についてだった、フフフ。
 すぐに彼はそれを実践し、そして成功した。

 彼の仲良しクライマーチームはとてもうまいヤツらで最近ではRock&Iceにも出ている。そのなかで一番レベルの高い、ボルダラーらしい質問をしてきたダスティン、バランスのとれたトビ−、おもしろければなんでもいいというヤツなど・・・日本じゃ相容れないかもしれないヤツらが共存しているところがまたすごい。

 肉体的要素だけならば私は彼らに圧倒的に負けている(編注/たしかにどう見ても負けている)。いかにも弱そうに見える私が楽に登るところを見てダスティンは多くを吸収したらしい。間違いなくヤツはアメリカを代表するボルダラーに成長するに違いない。
 彼のEメールにはいつも”Stay Strong”と書かれているし。

 今回一番カッコ良かったのはダスティンと一緒にライトニングをトライしていたドイツ人クライマー、ウィルだ。毎日彼女とリードに出かけ、ライトニングに帰ってくるタフなドイツ人、その頃には十数人のクライマーが集結し、セッションを楽しんでいる。

 彼は私の登りを見て”できる”と確信し、毎日トライを重ねた。やはりマントル部分では恐怖心との闘い。だが何度かのトライの後、ついに成功したのだ!その時彼は感動して泣いていた。

 2〜3喋った後、彼はこう言った。

「10年前来た時は2手しか進めなかったが、上に立つ事ができて良かった」

 このセリフがボルダリングの全てだと思う、”難しいからやる”のではなく、自分の限界を試せる”登る価値のあるライン”を自分で見つけて何年かかろうと登る。とてもカッチョイイ、それがボルダリングだと。

 その後、ウィルは「キング・コブラ」(V9 )を3撃し、ルートで落ちて足を折り、ライトニングの下で一人何かを考えたあと帰っていった。

カッチョイイ奴だったなあー。

  

 今回学んだのはカッチョイイ奴らと登っていると、自分もカッチョ良くなれるという事だ。

なんか”うまい”んだけど、ちっとも”カッコ良くない”奴になってしまっては結局周りのレベルも上がらないじゃないのかな。
 カッコ良い登り(自分の限界に挑む”ウィル”みたいに)ならもし下手だったとしても構わないと思う。やたら限定したりして、ただ”難度”だけを追求した課題を作る人にはもう少し考えてもらいたい。

そうすれば考えは違っても共存できる、あのアメリカの若いヤツらのように。

(Nao) 

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