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 イギリス・ボルダリングツアーの記録

STANAGE EDGE "Jerry's Traverse" B11/7c+
を、トライする室井トキオ

 99年8月8日から9月5日にかけて、イギリスのピーク・ディストリクトにボルダリングツアーに行った。メンバーは野田裕之、甲山哲也、大原秋彦、そして私の4人。甲山、野田は春からヨーロッパツアーに出ていたので、私と大原君が合流した形だ。
 今回のツアーは「ONE SUMMER」のボルダ−を訪ねるという主旨で、その他「THE REAL THING」「HARD GRIT」に出てきたボルダ−も訪ねてみようという試みだった。しかし、いくら「ONE SUMMER」とは言え、やはり8月というのはボルダリングに適したシーズンとは言えなかった。前半は曇りがちで涼しい日が多く、かなりフリクションが良かったためそれなりの成果が上がったが、後半はイギリスとは思えないような日照りの日がつづき、フリクションが最悪で、これといった成果があがらなかった。

 帰国後、あらためて「ONE SUMMER」を見てみると、妙に厚着した人物が映っているし、緑の濃さからいって、撮影されたのは5月から6月ではないか思われえう。とくに、「STONEY」「RAVEN TOR」「CRAG X」といった石灰岩のボルダ−は、とても8月の気温で登れるとは思えない。また、石灰岩は晴れると岩が結露していまい、今回はあまり登れる機会がなかった。

 とはいっても、ビデオで擦り切れるほど見たボルダ−に実際に触り、いくつかの課題を登る事ができたので、感動もひとしおだった。私にとっては聖地に巡礼したような気分だ。天気は悪いし、課題は妙にせこかったりするがやはりイギリスのボルダ−は期待通り素晴しく、ボルダ−の上から美しい牧草地帯を眺めるのは、とても気分のいいものだった。
 また、今回はボルダ−のみだったが、何キロにも及ぶ岩場に一本たりともボルトのないグリットには感動せずにはおれず、久しぶりにリードする意欲を掻き立てられるものだった。

 倫理には厳しいが、ルートや課題は易しいものから難しいものまで、そして比較的安全なものから、落ちれば死ぬものまである、これこそクライミングの原点。

 どんなクライマーでも、ここには多くの学ぶべきものがある。

「BRAD PID」と「WALK ON BY」は、最近でた雑誌では、それぞれ8aと7c+になっていたからグレードダウンしたのかもしれない。いずれにしても、難しさにそれほど驚く事はなかった。ただ、「BEN'S EXTENSION」「THE JOKER」はあまりにもリーチが足りず(ちなみに私は165cm)、ちょっと無理っぽかった。また、石灰岩は時期が悪く集中して登る事ができなかった。でも、「SUPER MAN」なんかはできそうな感じだったので、いずれ良い季節に再び訪れたいものだ。
STANAGE EDGE "Brad Pit" B13/8a+ →


 8a以上の課題は以外なほど数が少なく、リーチものも多いので、とにかく厳しい課題をいっぱい登りたい人には薦められない。ただ、課題の質は高く、7c以下はベラボーにあるので、だいたいの人はとても楽しめるハズ、初心者にはボルダ−はちょっとキツイかもしれないが、ルートがいっぱいあるから両方を兼ねていくといいだろう。
雨の日でも石灰岩のボルダ−は問題なく登れるので、天気の心配はしなくてもいいように思えた。シーズンはおそらく春と秋がベストだろう、ただ、秋は日が短いようだ。
STONEY
"Quent's Dyno"B8/7b
をトライする大原秋彦

 
RAVEN TOR
"Pinch Wall"
B3〜B11をトライする野田裕之

 

 石灰岩は奥多摩や二子山の石灰岩とほとんど同じような感じなので、もうひとつ新鮮味には欠ける。グリットストーン(硬砂岩)は独特のフリクションがきいて、なかなか日本では味わえないボルダリングができる。

僕らはグリットに夢中になってほとんどグリットでのぼっていた。強いて言えば鷹取山が硬くなったような感じか。


STONEY
"Tom's Original"
B7/7a+
の甲山哲也
 


 ともかくも個人的には今までで一番素晴しいボルダ−エリアだった。日本のボルダ−にも一番近い気がする。

 日本でのボルダリングの刺激になりそうなボルダ−文化に触れ、とても実りのあるツアーだった。今後はイギリスのボルダ−文化を色々と取り入れて、日本のボルダリングを盛り上げていきたいと思う。

 ちなみに全然関係ないけど、3月にはアメリカのBISHOP のBUTTERMILKで、「STAINED GLASS」 v11 を8回ぐらいのトライで登ってるんだぜ♪

(Tokio)

www.Bouldering.net