ベン・ムーン 単独インタビュー Page2
interview

→つづき

B.net:
実は最近、日本の昔からある易しいフリークライミングのルートがチッピングされた事があったんだ。
そしてほかの岩場ではボルダリングプロブレムにまでチッピングの跡がみつかって、それでクライミング界ではモラルの低下を危惧する声が出ていたんだけど。

そんな時に日本の有名なクライマーが雑誌でフランスのクライマー達を例にあげて「難しさを追求するためのチッピングなら許される」ととれる発言をしたんだけど、その雑誌はそれに何も意見を付け加えなかったんで僕達はチッピングに反対するキャンペーンをインターネット上ではじめたんだ。

これまで実際にクライミング界の限界を押し上げてきた君としてはチッピングに対して何か意見はあるかい?

 

Photo(c)Jerry Moffatt

BEN:
僕はどんな類いの事であれチ−ピング(編注/=cheaping)には絶対に正当性はないと思う。

その行為には岩を尊重する気持ちがまったくないし、岩がもたらす本来の難しさを克服するというクライミングの目的を打ち壊してしまう事だ。

 
 

B.net:
チッピングは岩の安売りっていうところかな?自然の岩を安売りしちゃいけないよね。

ところで、以前は違ったんだけど日本ではここ10年位の間にボルダリングをリードクライミングのためのエクササイズと思い込んでいる人が増えてしまって”安全のため”という理由で既成のボルダリングプロブレムの上に新しくトップロープ用のボルトを埋めてしまう人まででてきてしまったんだ。

トップロープクライミングは楽しいしやる事に問題はないんだけど、僕はボルト無しで初登されたプロブレムに後から登る人がボルトを打ち足す事は良く無いと思うんだ。もしアンカーが欲しいなら、まず立ち木やチョックでとる事も考えられるし、これについて君や君の友人達はどう思っているのかな。

 

BEN:
多分この件について君と僕の考えは同じだと思うよ。

僕の意見では、そのプロブレムが以前 からボルト無しで登られていたのならトップローピングのために後からボルトを埋めるべきではないと思う。

また、ボルダリングプロブレムの上にトップローピングのためにボルトを埋める事はそのエリアごとの考え方も関係すると思う、ピークグリットストーンではボルトは許されないが、フォンテ−ムブローのいくつかの大きな砂岩のボルダ−では許されている。

 
 
B.net:
君のビジネスについてだけど、"S7"(ベンの会社)をはじめようと思ったきっかけと名前の由来を教えてくれる?

 

BEN:
"S7"の名前は僕やほかの多くの素晴しいクライマーが住んでいるシェフィールドの郵便番号からきているんだよ。
僕は長い間この会社をはじめる事を考えていたんだ、クライミングクロージングをデザインする事は楽しいし、僕は本当に良い質やクールなクライミングクロージングという点でそれまで市場にでまわっていた製品と僕の考えるものとのギャップを感じていたからね。

 

B.net:
製品のデザインは全部君がやっているの?クラッシュパッドの”ダーツの的”みたいなデザイン(注/最新モデルにはなさそう)がとてもユニークで素晴しいけどあれも君が?

 

BEN:
僕が全部の製品をデザインしている。でも、デザインについてできるだけ多くの人に喜んでもらえるように、常に皆の意見を聞くように心掛けているよ。

 

B.net:
S7の製品は君の長い経験を生かしたものなんだね。最後に日本のボルダラーに何かメッセージをくれるかい。

 

Photo(c)Moon collection

BEN:
僕が日本のボルダラーにおくるメッセージはただ一つさ、
"keep on climbing, respect your rock and enviroment and have fun!"

”のぼり続けること、岩とその周りの環境を大事にすること、そして楽しむ事さ!”

(終わり)



インタビューを終えて---

世界中のフリークライマーで彼を知らない者はいないとまで言われるほどのカリスマ的ビッグスター、ましてや最近はビジネスでも多忙な毎日をおくるなか、我々の質問にとても真摯に答えてくれたベン・ムーン。限界に挑戦する者に漂いがちな神経質さや悲壮感を一切感じさせないその前向きな姿勢はいったいどこから・・・、

その答えは彼が日本のボルダラー達に贈ってくれたメッセージの中にあるのかもしれない。

数回に分けて行われたこのインタビューの最後の答えはツアー中のアメリカ合衆国ユタ州からだった、その後彼はこの地のプロジェクトに挑み、そして成功した。”Blacklung”(8b)おめでとう、ベン。

(B.net)


BEN MOON(ベン・ムーン)

プロクライマー/ボルダラー、そして自身の会社”S7”を率いる 1966年生まれ、イギリス人

7才からクライミングを始める。Maginot Line (8c)、Hubble(8c+)など数々のハードなリードルートの初登で世界中に知られるが、ここ数年はボルダリングに専念する一方で自身のウェア&ギアブランド”S7”(エスセブン)を設立し、ビジネス界でも精力的に活動している。

また、彼が出演した「ONE SUMMER」「Hard Grit」「The Real Thing」などのビデオで披露されたトレーニングや盟友ジェリー・モファット達とのセッションは、世界中の多くのボルダラー達に影響を与え続けている。

→”S7”

このインタビューは2000年2〜4月にかけて行われたものをまとめたものです。
また、使用した写真は許可を得てすべてS7より転載したものです。すべての記事の無断転載を禁じます。
(c)Bouldering.net&S7

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